プロが解説!正しいストレッチの知識・おススメのやり方動画22選|肩・腰・膝の痛みに

小学校の頃から体育の授業のはじまりに、準備運動としてストレッチしてきましたよね。

運動の前にはストレッチをすると良いと言われ続けてきたけど、実はなぜ良いのか、正しい知識を知らない人が多いのです。誤ったやり方で、運動前のストレッチでケガしてしまう人がいるほどです。

この記事では正しいストレッチの知識とおススメのメニューをご紹介します。

 

この記事の筆者

小山啓太/Keita Koyama

ストレッチの種類は6個

1)スタティック(静的ストレッチ)

スタティック、またはアイソメトリックストレッチは、ターゲット部位が引っ張られる感覚まで伸ばし静止するストレッチになります。

例:長座前屈

注意点

ストレッチは痛みがあってはいけません。痛みの感覚は筋神経の防御反応を強く刺激し、より筋肉の抵抗を強くしてしまいます。スタティックは柔軟性や関節可動域を高めるのに非常に適した種類である一方、筋肉のケガにつながることもあります。正しく行うことがより重要です。

2)ダイナミック(動的ストレッチ)

スポーツや運動前のストレッチとして適したものがダイナミックストレッチです。

運動前にスタティックストレッチを行っても、実際に速い動作などを行うと筋肉内の神経が防御反応を起こし、これが肉離れの原因となり得ます。その点、体を動かしながら行うダイナミックストレッチは筋肉内の防御センサーである筋スピンダルを効果的に刺激することで速い動きや強い負荷に対する準備を促します。

例:もも上げ、

注意点

いきなり速い動きで行わず、ゆっくりの動きで徐々に大きく動かします。反動をつけ過ぎてしまうとケガの原因になりますので、動きをコントロールして行います。

3)PNF ストレッチ

PNFとはプロプリオセプティブ・ニューロマスキュラー・ファシリテーションの頭文字をとったものです。

1960年ころから理学療法の世界などで知られるようになったストレッチ法で、当初はリハビリやスポーツ障害予防に活用されていました。現在ではあらゆる用途で活躍しています。

プロスポーツの世界やリハビリなら私には関係ない、と思われがちですが、一度理解するととても効果的で使いやすい、誰にでもメリットたくさんのストレッチです。

PNFの名前は筋肉内にある神経系統を刺激するという意味で、筋肉の収縮とリラックスを用いて柔軟性を高めるというやり方です。PNFは日常動作に通ずる多関節による斜めの動きなどにも対応することができる点でも、誰にでも効果を発揮するストレッチといえます。

例:ハムストリング筋肉に6秒強く力を入れた後にリラックスする

注意点

とはいえ、最初のやり方などを理解するには専門家に指導してもらうのが一番です。安全で効果的に行うために、まずは知識のあるトレーナーなどに教わるのが良いでしょう。

4)バリスティック ストレッチ

伸ばしたい部位に対して反動をつけて勢いでぐいぐい引っ張るこのタイプは、現在ではあまり推奨されなくなっていますが、バレエダンサーや格闘技など普通より高い柔軟性が要求される競技者などは、いまだに行われています。

例:開脚で前屈するときに反動をつける

注意点

安全性が低いストレッチですので、特に反動が強すぎるとケガにつながります。痛みが伴わないと意味がないと勘違いしないことが大切です。

5)MET ストレッチ


METはマッスル・エナジー・テクニックの略です。PNFストレッチに近いですが、筋肉に力を入れる割合がマックスの20%と低く、ゆるやかに行うことができるのが特徴です。

例:ハムストリング筋肉に10秒軽く力を入れた後に伸ばす

注意点

専門家の指導のもとに行うことが望まれます。

6)ニューラル ストレッチ

代表的な部位として首、肩、骨盤などの神経痛、特に坐骨神経痛などの治療で使われるのが、この手のストレッチ法になります。

神経系のストレッチになりますので、専門家が行うことが大前提になります。動きの中で神経痛が生じるポイントで最長10秒静止します。場合によっては3-4秒の静止にとどめ安全に行います。

例:専門家による坐骨神経のスランプテスト

注意点

自分で行うことはできないストレッチです。専門家の指導のもとに行います。

 

ストレッチがもたらす驚異的な6つの効果

ストレッチの6つの効果

  • 1)疲労回復や睡眠の質向上
  • 2)バランス能力やからだの連動を導く
  • 3)からだの硬直を改善しけがを防ぐ
  • 4)ダイエット効果を高めてくれる
  • 5)運動のパフォーマンスが上がる
  • 6)生活習慣病の予防につながる

1)疲労回復や睡眠の質向上

アスリートが競技の後にクールダウンでストレッチを行っている様子を目にすることがあるかと思います。運動後や一日中働いて家に帰ったあとに、酷使した筋肉群を優しく伸ばしてあげることは、適度に血行を促進し、局部にたまった老廃物の除去を助けてくれます

特に座り続けたり、歩きまわったときなどは、下半身のストレッチを行うことで血行やリンパの流れを良くして、むくみや疲れを解消してくれます。足のゆびからゆっくりとやさしくストレッチすると良いでしょう。

2)バランス能力やからだの連動を導く

米国のある研究では、42人の大学生を被験者として体の安定性を測る機械(Stabilometerと言います)に乗ってバランス能力などを計測する実験を行いました。一方のグループは機械に乗る前にストレッチ運動を行い、もう一方のグループは何もせずに座っていました。

結果は、ストレッチを行ったグループの方が明らかにバランス能力が高く、体を安定させることができたと報告しています。これらの先行研究から、運動前ストレッチにより細かい動作のスキルや運動協調を助ける効果があると考えられています。

3)からだの硬直を改善しけがを防ぐ

日常的にストレッチをすることで筋肉がほぐれ各関節の動きが良くなります。

ただし、どの種類のストレッチをいつのタイミングで行うかには注意が必要です。運動前のウォームアップにスタティックを行うよりもダイナミックの方が適しています。それぞれの特徴を生かしてストレッチを取り入れることで、筋肉のこりや硬さをやわらげ、日常生活を楽にしてくれます。また、運動前後のストレッチはあらゆるケガの予防に直結します。

4)ダイエット効果を高めてくれる

どんな運動に取り組むにしても、運動で得られる効果を高めてくれるのが正しいストレッチです。例えば、スクワットをするのに腰があまり下がらないスクワットと、ひざがしっかり曲がってお尻が下まで降りている深いスクワットでは、動員される筋肉も仕事量も大きく異なります。代謝も上がるためダイエットにも差が出てきます。

5)運動のパフォーマンスが上がる

正しいストレッチにより血行が促進され体温が上がり、関節の動きも良くなります。さらに筋肉の伸長により脳に対する準備を促します。全身の感覚や柔軟性が上がることでスムーズな動き、俊敏な動き、臨機応変な動きが可能になり、より速く、より高くを引き出すことにつながります。ジャンプするときにしっかりと下半身を沈められること、ボールを投げるときに体のひねりをうみだせること、柔軟性、関節の可動範囲がパフォーマンスに結びついてきます。

6)生活習慣病の予防につながる

2型糖尿病患者及び糖尿病予備群を対象にした研究では、日常的にストレッチ運動を行っていたグループと、運動を行っていなかったグループで、糖分の入った飲料を飲んだ40分後の血糖値を測った結果、日ごろからストレッチをやっていたグループの血糖値が顕著に低かったと報告しています。ストレッチを行うことで生活習慣病の予防や改善にも効果がある可能性を示した研究はこのほかにも多数示されています。

 

自宅で10分でできるおすすめストレッチメニュー

夜寝る前におススメのストレッチメニュー

寝る前は激しい運動は禁物です。リラックスできる環境で、少し暗い照明、落ち着く音楽などを聴きながら、ゆっくりと行いましょう。

寝る前のおススメストレッチ1)ベアハグ

胸の高さで両手で両肩を抱きかかえます。左右の腕を上下で入れ替えて何度か繰り返します。

寝る前のおススメストレッチ2)ネックストレッチ


首を左右に倒します。次に前後に倒します。ゆっくりと行いましょう。

寝る前のおススメストレッチ3)ニートゥチェスト

仰向けに横になり膝を左右交互に胸の前で抱えます。

寝る前のおススメストレッチ4)両足上げ

両足をお尻の位置で真上に上げて足首を上下に曲げ伸ばしする。

寝る前のおススメストレッチ5)バタフライ

仰向け姿勢で両足をつけて両ひざを開く

朝起きた際におススメのストレッチメニュー

一日のはじまりである朝にストレッチを行うことはその日の脳やからだの働きを良くしてくれ、あらゆる仕事の効率を高めます。まずは脳とからだが覚醒するように神経系をやさしく刺激してあげましょう。

朝起きた際におススメのストレッチ1)チャイルドポーズ


正座の姿勢で上体を前に倒して両手を前に伸ばします。

朝起きた際におススメのストレッチ2)プレススカイ


両手を組んで頭の上に伸ばして背筋も一緒に伸ばします。

朝起きた際におススメのストレッチ3)ツイスト


仰向けに横になり左右の足を交互にツイストして腰を伸ばします。

朝起きた際におススメのストレッチ4)トゥストレッチ


長座の姿勢でつま先を伸ばします。伸ばしたあとはつま先を自分の方へ引き上げます。これを繰り返します。

朝起きた際におススメのストレッチ5)ショルダーストレッチ


ひじを頭の後ろに上げて片方の手で押さえて肩と脇腹を伸ばします。

部位別|首の痛みにおススメのストレッチ3選

肩の痛みにおすすめストレッチ1)イヤートウショルダー


反対の耳に手をあてて耳を肩に近づけるように倒す

肩の痛みにおすすめストレッチ2)ハンギングハンド

https://www.youtube.com/watch?v=IjOa9vkKRWU

頭を前に倒して両手を頭の後ろにもたげる

肩の痛みにおすすめストレッチ3)ジョウリフト

https://www.youtube.com/watch?v=ZY3s2Y1dTck

首を後ろに反らしてあごを優しく親指で持ち上げる

 

部位別|肩こりにおススメのストレッチ3選

肩こりにおすすめストレッチ1)プレイヤー

https://www.youtube.com/watch?v=2C6gQnGQ_pM

合掌で両手を上、前に伸ばす、背中で合掌

肩こりにおすすめストレッチ2)シュラッグ

https://www.youtube.com/watch?v=PuHoEYF9-68

両肩を持ち上げて、ストンと落とすを繰り返す

肩こりにおすすめストレッチ3)エルボークロール

https://www.youtube.com/watch?v=OwiF4Q5JJaE

指先を肩につけてひじを大きく回して円を描く

部位別|腰の痛みにおススメのストレッチ3選

腰の痛みにおすすめストレッチ1)ニートウチェスト

https://www.youtube.com/watch?v=9hVZ4rc2_3Y

仰向けに寝て片ひざずつひざを抱える

腰の痛みにおすすめストレッチ2)スフィンクス

https://www.youtube.com/watch?v=IzEjLbkeBA8

うつ伏せでひじを立てて体を起こす

腰の痛みにおすすめストレッチ3)ニーホールド

https://www.youtube.com/watch?v=eKp2f5-jRbI

あぐらで足を交差して上方のひざを立てて両手で胸の方へ抱える

部位別|ひざの痛みにおススメのストレッチ3選

ひざの痛みにおすすめストレッチ1)ニーフレックス

https://www.youtube.com/watch?v=BO046abkurQ

片ひざを曲げてお尻の横につける

ひざの痛みにおすすめストレッチ2)シングルレッグライズ

https://www.youtube.com/watch?v=qsv-WI4jD3Q

仰向けに横になり片足を伸ばしたまま上げる

ひざの痛みにおすすめストレッチ3)カフストレッチ

https://www.youtube.com/watch?v=CEBfE1yUsh4

ふくらはぎを伸ばす

 

やってはいけないストレッチのポイント

・体がひえている状態でやってしまう

・痛いのに無理してやり続ける

・リラックスしていない

・呼吸を止めている

・ほかの人に無理やり押してもらう

 

参考文献:

1)Nelson, A.G., Twenty minutes of passive stretching lowers glucose levels in an at-risk population: an experimental study, Journal of Physiotherapy Volume 57, Issue 3, 2011, Pages 173-178

2)Nelson,A.G., Acute Stretching Increases Postural Stability in Nonbalance Trained Individuals, J Strength Cond Res. 2012 Nov;26(11):3095-100.

3)Harvard Health Publishing Harvard Medical School, Try these stretches before you get out of bed, 2020 Mar., 

4)Muanjai, P., The effects of 4 weeks stretching training to the point of pain on flexibility and muscle tendon unit properties,

5)Muanjai, P., Jones, D.A., Mickevicius, M. et al. The effects of 4 weeks stretching training to the point of pain on flexibility and muscle tendon unit properties. Eur J Appl Physiol, 2017 Apr, 117, 1713–1725.

6)Shrier, I., Stretching before exercise: an evidence based approach, Br J Sports Med. 2000 Oct; 34(5): 324–325.

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