1. 知る人ぞ知る家具の黄金時代ミッドセンチュリーってどんなもの?
画像参照:https://www.homes.co.jp/renovation/c-2353/case/60126/
ミッドセンチュリー(Mid century)は英語的には世紀の真ん中という意味です。
しかしデザインの世界では、ミッドセンチュリーは20世紀中旬に生み出された家具や生活雑貨、インテリアや建築などのデザインのことを指します。
およそ1940年代から1960年代にかけては、数多くの有名デザイナーが活躍し、いまなお名作家具や名建築といわれるデザインが本当にたくさん世に送り出されました。こうした背景からミッドセンチュリーは本来の英語の意味から変化し、この時代の家具やインテリア、建築などのデザイン全般のことを指すようになったのです。
2. ミッドセンチュリーの歴史・特徴
画像参照:http://free-photo.net/archive/entry11161.html 画像参照:http://free-photo.net/archive/entry11226.html
20世紀中旬はちょうど第二次世界大戦が終わり、世界中が復興に向けて慌ただしく動き始めていた激動の時代。戦争で疲弊した国々では物資が不足しており、家具から生活雑貨、洋服や食品に至るまで様々なものが必要とされ、ありとあらゆるものが急ピッチで製造されました。
特に戦時中に質素な暮らしをしていた庶民にとっては、身の回りで使うものに関しては豊かな暮らし=デザインも美しいものという意識が強く作用したそうです。
第2次世界大戦後に無傷だったアメリカの生産能力
特に大戦時に国土が無傷であったアメリカの戦後の発展は目を見張るものがありました。
新らしい技術の開発も積極的に行われ、木材を曲線的に加工する成型合板技術、ガラス繊維と樹脂を組み合わせたFRPによる成型技術など、たくさんの技術が生み出され、製品の大量生産の体制が整えられました。
ドイツのデザイン教育学校バウハウス講師がアメリカへ亡命
画像参照:https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019122400005.html 画像参照:https://www.dezeen.com/2019/04/12/bauhaus-architecture-design-school-a-z/
また当時最先端であったドイツのデザイン教育学校であるバウハウスが大戦時にナチスに弾圧され、デザインを教えていた講師たちのほとんどはアメリカへと亡命。第二次世界大戦後には偶然にもアメリカには最先端のデザイン教育ができる下地も出来上がっていたのです。
大量生産の体制と高度なデザイン教育が合わさり、アメリカでは近代デザインが急速に発展。デザイン大国としても大きく成長しました。ミッドセンチュリーの流れの中でも、特にアメリカが強く連想されるのはこのためです。
たくさんのデザイナーが世界に向けて羽ばたいた時代。
20世紀中旬がデザインの黄金期と呼ばれている要因として、流通網の発達も挙げられます。
奇しくも戦争で発展した航空機や船舶などのテクノロジーが輸送網に転用され、ひとつの製品がこれまでよりももっと広く世界中に届けられるようになりました。
製品が世界中に広まることでその製品を手掛けたデザイナーの名前も広く知られるようになり、デザイナーたちを一気に世界のスターダムに押し上げたのです。
3. ミッドセンチュリーで活躍した主なデザイナーとメーカー、その代表作
画像参照:http://interior-online.net/feature_mid_century.html
そんなミッドセンチュリーの中でも、特に有名なデザイナーを紹介します。本当は紹介したいデザイナーを挙げたらきりがないくらいなので、この人は知っておいて欲しいという6人のデザイナーに厳選しました。
もしかしたらデザイナーの名前を耳にしたことがあったり、一度は目にしたことがある家具があるかもしれません。彼らの名前とデザインを押さえておけば、今日からあなたはミッドセンチュリー通!
3.1 ミッドセンチュリーといえばこの人!チャールズ&レイ・イームズ夫妻
画像参照:https://nonversus.jp/vmag/2017-3528/ 画像参照:https://e-comfort.info/ch4068s_pv01/
ミッドセンチュリーといえばこの夫婦。チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻。
いまでも世界中で愛されるシェルチェアをはじめ、たくさんの名作家具を世に送り出してきました。彼らが特に得意としたのは薄いベニヤ板を曲げながら貼り合わせて曲面上に作る成型合板と、樹脂にガラスの繊維を組み合わせて強度を持たせたRP成型でした。彼らのデザインの背景には、こうした新技術の誕生がともにありました。
代表デザイン:ラウンジチェア&オットマン / 当時は富裕層向けのチェアとして販売され、ロングセラーとしていまでも販売され続けています。その最上の座り心地に憧れる方も多かったはず。
3.2 独創的なセンスの芸術家、イサム・ノグチ
画像参照:https://www.nsb-relaxingroom.com/?pid=11480556 画像参照:https://art-ippo.com/isamu-noguchi
イサム・ノグチは父親が日本人と母親がアメリカ人の日系アメリカ人の芸術家です。
彼が手掛けた作品は彫刻からインテリアデザイン、照明、造園に至るまで幅広く、多岐にわたる作品を残しました。北大路魯山人から陶芸を学んだ経歴も持つ、まさに同区層的なセンスを持つ芸術家です。ほかのデザイナーと比べて異色で、芸術家としての熱量を感じるような家具たちはいまの時代に見ても新しさを感じます。
代表デザイン:コーヒーテーブル / まるでオブジェのような魅力のローテーブルはイサム・ノグチを代表する作品です。接合部を細く絞る高度な技術により実現した、まさに実用できるアート。
3.3 時代を問わず愛されるモダンデザイン、アルネ・ヤコブセン
画像参照:https://www.marsainc.co.jp/brand/arne_jacobsen.html 画像参照:https://restyle-net.com/?pid=4246248
アルネ・ヤコブセンは数多くの名作を世に送り出したデンマークデザインの第一人者です。
建築から家具、照明や食器に至るまで幅広いデザインを手がけました。彼のデザインの最たる魅力はモダン的な様式とその普遍性。
彼が手掛けたデザインの多くは世に送り出されてから今日に至るまで、いつも時代も変わらずに多くの人たちに愛され、そして使われ続けています。まったく古くなることのない不思議なデザインです。
代表デザイン:エッグチェア / まるで卵を連想させるような柔らかでまるみのあるデザインのチェア。発泡ウレタンを曲面的に加工することで生まれるフォルムは多くの人たちを魅了しました。
3.4 職人気質のアルチズム、ハンス・J・ウェグナー
画像参照:https://www.espacekm.com/hans-j-wegner- 画像参照:https://e-comfort.info/ch4068s_pv01/
ハンス・J・ウェグナーはデンマークのデザイナーです。
彼の作品の特徴となっているのはその職人らしいアルチズム。彼はデザイナーになる前の若い頃から家具工房に弟子入りし、17歳のころには指物師のマイスターとして認められました。その後大学でデザインを学び、以降は後世に語り継がれる様々な美しい名作椅子を生み出しました。
生涯で500種類以上もの椅子をデザインしたそうで、まさに職人の魂を持ったデザイナーです。
代表デザイン:ザチェア / 世界で最も美しい椅子と称されるザ・チェア。木という素材の特徴を熟知しているからこそ生まれた、曲面と継ぎ手の構造はまさに芸術工芸品のような美しさ。
3.5 ジャパニーズデザインの礎を築いた大御所、柳宗理
画像参照:https://nonversus.jp/vmag/2017-3528/ 画像参照:https://www.sempre.jp/unit/10057/
日本でもミッドセンチュリー時代に活躍したデザイナーがいることをご存知ですか。彼の名前は柳宗理。近代の日本デザインの礎を築いた人物です。
彼のデザインの魅力は徹底した試作品作りを通して生み出される構造と形状。スケッチを描くよりもまずは試作品を作って実際に触りながら形を決めていたそうで、徹底した現物主義により、家具から日用品に至るまで、美しさと実用性を兼ね備えたデザインが生み出されました。
代表デザイン:バタフライスツール / 柳宗理の代表作として名高いバタフライスツール。余計な構造をそぎ落としたからこその蝶のような美しさ。海外でも非常に高い評価を得ているデザインです。
3.6 デザイナーを支えた主なミッドセンチュリーのメーカーとその背景
画像参照:https://www.realstraight.co.jp/column/028/
またミッドセンチュリーのデザイナーの華やかな活躍の裏には、デザイナーの想いを実現するためのメーカーの技術開発へのたゆまぬ努力がありました。
ハーマンミラー社、ノール社、フリッツハンセン社、カール&ハンセン社、ルイス・ポールセン社など、一流といわれる多くのメーカーがこの時代にデザイナーと協力して様々な製品を世に送り出しました。そしてデザイナーの躍進と共に、メーカーも世界をフィールドとして大きく成長してゆきました。
4. プロダクトデザイナーが選ぶ!5万円以下で変えるミッドセンチュリー名作家具!
画像参照:https://www.designerskagu.jp/SHOP/sp5198552.html
そんなミッドセンチュリーの名作家具!ここまで記事を読んでゆくうちに、物欲をくすぐられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでVells編集部がプロのプロダクトデザイナーに5万円以内で買えるオススメのミッドセンチュリー家具について伺いました。選び方のポイントとコーディネートのコツは必見です。
4.1 どんなインテリアにもマッチ!世界一有名な椅子、イームズのシェルチェア
シェルチェアのコーディネート例
画像参照:https://roomclip.jp/mag/archives/3302
世界一有名な椅子といっても過言ではないイームズのシェルチェア。可愛らしいフォルムと計算された座り心地、そして豊富なカラーと脚部のバリエーションが存在し、どんな空間にもマッチする椅子です。脚部がスチールのものと木材のものがあるので、インテリアの雰囲気に合わせて選ぶことができるのが嬉しいところ。座面はひじ掛けがないタイプとひじ掛けがあるタイプのものがあり、選ぶ楽しさまでデザインされています。
4.2 考え抜かれた座り心地と無駄のない生産性、ヤコブセンのセブンチェア
セブンチェアのコーディネート例
画像参照:https://connect-d-blog.com/archives/11760
セブンチェアは成型合板という、薄いベニヤ板を曲げながら何枚も重ねて接着剤で固めて成型してかたちを作る技法で製作される椅子です。成型合板によって座面と背が一体になったこのデザインは当時としてはかなり斬新でした。計算されつくした座り心地、そして無駄のない生産性。そして大人も子どもも親しめる普遍的で飽きることのないデザインです。結婚して子供が生まれたりしたら、リビングルームに揃いで置きたい椅子ですね。
4.3 ナチュラル系インテリアにもぴったり、Yチェア
Yチェアのコーディネート例
画像参照:https://www.sempre.jp/unit/10018/
Yチェアは木の温もりとペーパーコードで編みこまれた座面とのバランスが絶妙で、日本でもかなり販売されている有名な椅子です。その背もたれの特徴的な意匠からYチェアという名前が付けられました。ハンス・J・ウェグナーは17歳の時に指物師のマイスターを取得しており、木という素材の特徴を熟知しているからこそ生み出された線の細さや曲線が美しい椅子です。木と木の接合部の意匠までもが美しく、思わずうっとりと眺めてしまいそうになる完成度です。
4.4 近代照明の父、ポール・ヘニングセンがデザインしたPHランプ
ポール・ヘニングセンのPHランプのコーディネート例
画像参照:https://www.connect-d.com/item/792.html
ポール・ヘニングセンがデザインするPHランプ。彼は近代照明の父ともいわれ、その生涯をかけて光の反射や広がり方やコントロールについて研究に費やしました。PHランプはその研究の集大成ともいえるもので、心地よい光の空間への広がりは彫刻のような美しさ。本当に良い照明は光っているときは美しいのはもちろん、光が消えているときも美しいもの。部屋の中のアクセントとしても美しく、デザイン通ならぜひ揃えたい照明です。
4.5 個性的な見た目が部屋のアクセントに!ジョージネルソンの時計たち
ジョージネルソンの時計のコーディネート例
画像参照:https://e-comfort.info/cw08/
ジョージ・ネルソンがデザインした通称ネルソンクロック。いまでもコアなファンやコレクターが世界中にいる名作時計です。家具のデザインでも良く知られるジョージ・ネルソンですが、実は時計も数多く手掛けました。彼がデザインした時計に共通するのは、時計としての機能とオブジェとしての美の両立。空間の中で目立つ個性を放ちながらも、時間を知らせるという機能性もしっかりと成立させているのはまさにデザイン力といえます。
4.6 北欧ミッドセンチュリーの巨匠カイ・フランクのグラス、KARTIO
カイ・フランクのKARTIOのコーディネート例
画像参照:https://www.webo-kobe.com/items/tableware/kartio2/kartio.html
最後に紹介するのはフィンランド出身のカイ・フランクのグラスです。戦後で物資の乏しい時代。彼はこれまでの装飾性の高いテーブルウェアからイメージがかけ離れた量産性を踏まえたシンプルさを追求しながらも、その中に美しさが感じられるフォルムにこだわって食器やグラスをデザインしました。現代のテーブルウェアのデザインの原型ともいえるこのグラスは、使いやすくも美しい、時代を問わないロングノーズの製品です。
5. ミッドセンチュリーの家具に実際に触れてみたい!
5.1 ミッドセンチュリーの家具を豊富に扱っているお店7つを紹介
画像参照 https://tabroom.jp/contents/shop/hermanmiller-store-showroom-open/
東京 / ハーマンミラーストア(ミッドセンチュリーを代表するメーカー)
https://storesystem.hermanmiller.co.jp/fs/hmjapan/c/store_tokyo_display
東京 / hhstyle青山ショールーム(ミッドセンチュリーほか様々な名作家具)
東京 / Mid-Century MODERN(ミッドセンチュリーの名作家具が充実)
https://mid-centurymodern.com/
東京 / Gallery 1950(ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具を取り扱い)
名古屋 / Palm Springs(アメリカンミッドセンチュリーを中心の品揃え)
京都 / ノルディック(北欧のミッドセンチュリー家具を取り扱い)
兵庫県 / ibukiya(アメリカと北欧のミッドセンチュリー家具を取り扱い)
https://ibukiya.net/html/page1.html
5.2 ミッドセンチュリーの家具が見れる美術館を紹介
画像参照:https://urawa-saitama.mypl.net/shop/00000356098/
埼玉県立近代美術館 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=50
5.3 ミッドセンチュリーの家具が使われている飲食店を紹介
画像参照:https://chairlabo.com/gaga-isu-bar/
gaga ISU BAR https://chairlabo.com/gaga-isu-bar/
5.4 まとめ
デザインの黄金時代ともいわれるミッドセンチュリーモダン。その流れからデザイナー、そしてオススメの製品まで紹介してきました。ここまで読み進めたあなたはきっとすでにデザイン通!人に話すのも良し、実際に製品を買うも良し、あなただけのミッドセンチュリーの楽しみ方を見つけてみて下さい。