ランニング事始め。たくさん楽しむ心で始めよう|哲人ランニング学者からの手紙

ランニング事はじめ。山西哲郎

前回に続き、ランニング学者の山西先生から「如何にランニングを始めるか?」を伺いました。

▼第1回インタビューはこちら

ランニング学者山西氏表紙
「なぜ走るのか」「いかに走るのか」。走ることを通して人生を豊かにするランニングとは。

山西哲郎 日本のランニング学者。市民ランナーの指導者。群馬大学名誉教授。東京教育大学大学院体育学研究科修士課程修了。日本体育学会元会長、日本オリエンテーリング協会会長、ランニング学会元会長、日本コンチ ...

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ランニング情報-編集顧問 山西哲郎

日本のランニング学者。市民ランニング指導の第一人者。群馬大学名誉教授。東京教育大学大学院体育学研究科修士課程修了。日本体育学会前会長、日本オリエンテーリング協会会長、日本コンチネンス協会会長、ランニング学会元会長、NPO法人日本市民スポーツ海外交流協会副理事長。ランニングの世界編集責任者他、執筆、著書多数。

▽インタビュー記事
「なぜ走るのか」「いかに走るのか」。走ることを通して人生を豊かにするランニングとは。

じっとしている人には感じない風を、走っているおれたちには感じる 灰谷健次郎

暑い陽射しの季節から、肌にあたる風から「あれ、涼しい秋がやってきた」と感じる10月の訪れ。

青い空を見上げながら、ゆっくり走ってみれば、作家の灰谷さんの言葉のように、家の中でじっとしていた時に感じなかった心地よい風を感じる。目に穏やかな太陽の光と肌の乾いた風が私を包み、すると一歩一歩、体のなかからエネルギーが湧いて自然と体が動き、心は楽しくなってくる。それは呼吸で体に取り入れた空気のなかの酸素が身体全体の60兆のすみずみ細胞までに行きわたる証?

今や、運動やスポーツの秋。運動会をはじめとして、遠足、旅行など野外の行事などによって体も心もたくましく思い出いっぱいにして厳しい冬を乗りこえるにふさわしい季節になってくる。

感じること

私は50年近く、体育の教師、それもランニングの指導が専門です。

「今日から。ランニングの授業を始めます」といえば、多くの学生や生徒たちは学校の体育やマラソン大会や部活でのイメージや思い出が浮かび、「走らされた」「速い遅い」「苦しい」の言葉が出てきます。

しかし、中年の女性が私に語ってくれました。

中学生の時、「明日、マラソン大会は遅くて走りたくないので、学校に行きたくない」と、お父さんに話したとき「回れ右をすれば、一番になれるんだ」と言われ、翌日、楽な気持ちで学校へ行けました。

そして、中年になってから、その言葉と走った感じが甦り、その女性は走りはじめ、今では市民ランナーとなって楽しく続けています。このように、走るには「楽しい」というイメージの言葉が湧いてくるかどうかです。それにはまず、体で感じることから始まります。

では、授業形式で話しを進めてみましょう。

体の言葉を聞こう

「なぜ走るのですか」と聞かれれば、「健康のため」「大会に出場するから」といった目的や義務的な言葉が出てきますが、むしろ「自由になった気持ち」、「心地よい」「気晴らし」「自分のペースで走る」「空が美しい」といった自分の心や体から感じる言葉が生まれ楽しい走りの始まりになってくるのです。

まず、深呼吸で気晴らしを

ランニング深呼吸

背中をまっすぐ伸ばし、肩をあげ鼻でゆっくり息を吸い、口からゆっくり吐き出す。それをできるだけゆっくり繰り返す。いやなことを思い浮かべ吐きだし、気が晴れるように・・私たちの室内中心の生活では肺一杯の空気を入れることもなく、うっぷんもたまっているので深呼吸でまず、それを吐きだす気分で・・

筋肉と話をしよう

ランニング前運動2

運動前の準備運動としてストレッチ体操が良く行われていますが、単に体を伸ばし、やわらかくしているだけではなく、むしろ、筋肉を伸ばし、その筋肉と話をしているのです。つまり、脳と筋肉をつなげながら話をしているのです。つまり、脳と筋肉の対話です。

ランニング前運動1

「少し筋肉が痛みます」「椅子に座っていたからでは?」といった調子で感じて、言葉にしながら各部位のストレッチをすれば、筋肉と脳のつながりが身体全体に広がって語り合いの世界になってきます。

歩く走る動作は脚だけではなく、腕も上体も身体全体で動くのですから、感じやすく、動きやすくなり、自由や解放感の言葉が出てくるではありませんか。そして、ストレッチで表情は明るく、さっきまでの硬い体は軽さを感じスムーズに動き始めるではありませんか。

まず、歩くことから

まず、走ろうとするでしょう。でも、走る前には、まず歩くことから始めたし。「寝ている人は座りなさい。座っている人は立ちなさい。立っている人は歩きなさい。歩いている人は走りなさい」という動きの変化が赤ちゃんからの成長や病気からのリハビリの回復過程です。それは次第に全身で優しく軽い動きから、大きな激しい動きにすることが、無理なく、筋肉と脳の協働作業なってきます。

深呼吸をして、手足を伸ばしストレッチ。そして腕を前後に振り、踵から着地をして歩幅を広げのウオーキング。車の多い道路を離れ、公園や川沿いの道、林間の道を求めて小さな旅をするように美しい風景さがし。

歩と走は同じスピード? ゆっくり走 ジョギング

さあ、走ろうとすれば、だれしも速いスピードになって、直ちに息切れ。まさにスピードメーターを無視した暴走。まず、今迄までに身につけた歩くスピードと同じゆっくりスピードで走るゆっくり走英字ではジョギング

散歩をしている人を追い抜きません。二人ならば、一人は歩き、もう一人は走ります。話もできます。周りの風景が良く見え、道端の野花も目に入ります。とにかくスロースピード・スローライフ。心の世界となって楽しさが湧いてくれば、素敵なランナー。いやランナーというよりは、素敵なジョガーといいましょう。

マラニック

マラニックとは、ニュージランドで生まれたマラソン+ピクニックの合成語。私はマラニックを初心者の走り方から、長い距離・時間を走破するトレーニングや大会を開催しています。

長い道のりを走破するには、歩きと走りを繰り返せば、可能になってくるのです。それは呼吸循環器の負荷が低く、脚の筋肉の動きが走と歩ではやや異なり、幅広く使えるからです。

ゆっくり走の評価

ゆっくり走ができているかの評価をしているかを考えてみましょう。次の項目がチェックポイントです。

チェックリスト

  • 1)歩くに近いスピードか
  • 2)息切れがしないか・・口と鼻呼吸で
  • 3)脈拍数・・手首を押さえ、10秒間で幾拍か。6倍して1分で約90~110拍
  • 4)心理的な強度・・楽からやや楽
  • 5)走る道は・・車道は避け、公園、土の道、芝地・・硬い走路は着地のショックが体重の3倍と強いのです
  • 6)シューズは・・普段の靴よりは少し大きめ。指が動きやすい

週に何日、1回何分が良いのか

できれば、無休。歩くことゆっくり走は、生活の一部、つまり、食事や休養のように、毎日、規則的に、気晴らしになるように少し

ずつ、行うこと。例えば、最初の段階は次のようにすすめ、1カ月単位で時間を長くしていくことです。まず、目標は30分ゆっくり走ができること。

  • (月)10分ウオーキング
  • (火)10分ゆっくり走
  • (水)10分ゆっくり走
  • (木)10分ウオーキング
  • (金)5分ゆっくり走
  • (土)15分ウオーキング+5分ゆっくり走
  • (日)30分から60分ウオーキング

足が痛くなったら

走り始めの時は あしに痛みを感じやすいのですが、休むのも一つの方法ですが、むしろ痛みを感じない方法で続けることが、回復も早いものです。

ウオーキングや自転車であれば、全身運動で痛みもなく、ゆっくり走がカバーできます。むろん水泳でも同じ全身のスポーツ。

さあ、これであなたの走る世界が始まります。時計に追われる日々をゆっくり走で時計の進みをゆっくりに変えてみたいですね。

  • この記事を書いた人
yamanishi

yamanishi

山西哲郎 日本のランニング学者。市民ランナーの指導者。群馬大学名誉教授。東京教育大学大学院体育学研究科修士課程修了。日本体育学会元会長、日本オリエンテーリング協会会長、ランニング学会元会長、日本コンチネンス協会会長。鳥取県出身。

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