自宅でヨガを始める前に
ヨガのポーズは簡単そうに見えるものもありますが、誤った態勢のままポーズをとると頸椎や背中、腰などに負荷がかかってしまうこともあります。 普段あまり運動をしていない方やヨガ初心者の方は、からだを痛めてしまう危険もあるため、自宅でヨガをする際は無理をしないよう注意して取組んでください。
『動く瞑想』と呼ばれることもあるアシュタンガヨガは、様々な流派の中でも運動量の高いヨガです。
流れるように行うポーズ練習には厳格な規則があり、その前後には『マントラ』を唱えることでも知られています。どちらかというと動的で男性的なイメージを持つ人も多いようですが、女性が行えば身体の変化を最も早く感じられるヨガです。
この記事では、アシュタンガヨガにある魅力的なメリットやその効果をじっくり解説します。合わせて、ちょっと不思議なマントラ豆知識やハタヨガとの違いなども紹介しています。
代表的なポーズや、順番を覚える練習に最適な動画もピックアップしているので、「普通のヨガじゃ物足りない」と思っている人はぜひ参考にしてくださいね。
目次
アシュタンガヨガはこんな人におすすめ!
- 身体を動かすのが好き、活動的
- 汗をかいてストレス発散、爽快感を得たい
- 集中力をアップしたい
- ダイエットしたい
- 心身ともに成長したい
『動く瞑想』と呼もばれるアシュタンガヨガは「運動大好き、スパルタ体育会系」という人には特におすすめです。ポーズのルールだけでなく『守るべき生活の礼儀』が決められていて、武道のような一面もあります。
練習法も6つのレベルに分けられ、ポーズをホールドしたら5呼吸ずつキープするなど、他のヨガに比べると厳格な修行にも見えますね。「経験者じゃないと難しそう」と思うかもしれませんが、意外と初心者でもハマる人が多いです。
アシュタンガヨガとは
「アシュタンガヨガってどんなヨガ?」という人のために、そのルーツと特徴を紹介します。
引用:pixabay
ヨガの八支則をもとに考案された
『八支則』をサンスクリット語で表すとアシュタンガ、ヨガにおける8つの基本を表したものです。
- ヤマ(禁戒)
- ニヤマ(勧戒)
- アーサナ(坐法)
- プラーナヤーマ(呼吸法)
- プラティヤーハーラ(感覚制御)
- ダーラナ(集中)
- ディヤーナ(瞑想)
- サマーディ(三昧)
この八支則を実践するヨガとして考案されたのがアシュタンガヨガです。紀元前からつづく八支則をヨガの練習だけでなく、日常生活にも取り入れて現代まで守っているのが特徴です。
練習の始めと終わりにはマントラを唱え、練習や日常生活への心構えを確認するのもアシュタンガヨガならではです。
流れるようにポーズを次々に行う
アシュタンガヨガの特徴は決められたポーズや呼吸法を連続して行うところです。
ヨガのシークエンスの中でもっとも有名な『太陽礼拝』から、立位・座位・逆転と全てのアーサナの順番が決められています。それらを呼吸と連動させながら、流れるように動く力強さが魅力です。
練習では毎回同じルーチンを行うので、身体の変化や心の健康状態にも気づきやすくなります。
ほかのヨガと比べ運動量が多く体の変化が現れやすい
ダイナミックでパワフルなアシュタンガヨガは、運動量が多いので身体の変化が早く現れます。
連続する全身運動で発汗量も多く、消費カロリーはヨガの中でもトップクラス。基礎代謝量を上げるために必要なインナーマッスルが発達しやすいので、ボディラインのサイズダウンも期待できます。運動量が多いという点で、身体を鍛えたい男性にも人気があります。
アシュタンガヨガ|3つのメリットや効果
男性的と感じるアシュタンガヨガですが、実は女性に嬉しい効果があるのです。わかりやすく解説しましょう。
引用:pixabay
1、基礎代謝アップ効果でシェイプアップに最適
どのヨガも呼吸とポーズをシンクロさせますが、特に動きが激しいアシュタンガヨガは運動強度が高い有酸素運動に含まれます。
さらにアシュタンガヨガは有酸素運動と筋力トレーニングを同時に行える要素があるので、基礎代謝をアップするのにとても効果的です。有酸素運動で脂肪を燃焼しながら筋肉量を増やしてエネルギーの消費が促進されます。
アシュタンガヨガは単にダイエットに向いているというよりも、ボディラインを美しくシェイプするのに最適なヨガともいえるでしょう。
2、精神力が身についてストレスに強くなる
決まったシークエンスを流れるように続けるアシュタンガヨガは、メンタルの弱さを克服して強い精神力を身につけることができます。
「根気がないのが短所です」という人でも忍耐力が高まり、少しのことで悩みがちな人を動揺しにくくしてくれます。また、動と静のバランスで自律神経が調整され、リラックスと集中のスイッチングが上手くなるのもメリットです。
ヨガの練習を続けることで精神力を高められるというのは、人生を変える経験になるかもしれませんね。
3、高い運動量で心肺機能が強化される
アシュタンガヨガは他のヨガよりも運動強度が高く、はじめのうちは息が上がるという人もいます。
大きな動作を行なっていても呼吸を荒くせずに行うことが重視されるので、心肺機能が強化されます。心肺機能が上がると体内に取り込む酸素量が増加し、全身の血行も促進されて免疫力もアップします。
日頃から疲れやすい人の体質改善にも向いています。
アシュタンガヨガのポーズ5選
アシュタンガヨガの代表的なポーズを5つ紹介します。しっかり足裏や座骨で床を捉えて、バランスよく行いましょう。
全てのポーズのスタートとフィニッシュは、顎を引いて腰をそらさずに正しい姿勢でまっすぐに立つ『山のポーズ(Tadasana)』です。
1、伸びた三角のポーズ(Utthita Trikonsana)
引用:freepik
伸びた三角のポーズとは
ポーズ名はUtthita(伸びた)Tri(3) kona(角)の意味。アシュタンガヨガ立位の代表的なポーズで、重力に打ち勝つ身体のバランスを得ることができます。
伸びた三角のポーズのやり方
- 両足を大きく開き、右足先は外側へ向けて立つ
- 息を吸いながら両腕を鎖骨の延長線上になるように伸ばす
- 息を吐きながら状態を右へ倒し、指先は小指側から指先を掴む
- 胸を開いて左手を天井につられるように上げ、目線は指先へ
- ホールドして呼吸する
- 息を吸いながら上体を起こす
- 息を吐きながら腕を下ろして足を閉じて元へ戻る
曲げた右脇腹は縮めず体幹を伸ばすように行うのがポイント。上半身を前に倒さないように注意しましょう。
- 避けた方が良い人:首のトラブル・めまいがある人
おすすめポイント
体幹だけでなく全身の筋力・柔軟性アップや関節の可動域を広げる効果があります。内臓のマッサージ効果もあるので便秘解消にも効果的です。
伸びた三角のポーズでのハタヨガとの違いは『足指を掴む』という点です。
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ハムストリングスのストレッチに抜群!三角のポーズ#40
体が硬い人でもできるアーサナ 「ヨガをやりたいけれど、体が硬くって・・」とおっしゃる方はとても多いです。本来ヨガとは身体が柔らかくなければ出来ないというものではありません。 身体の柔軟性があると生活の ...
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2、体側を伸ばすポーズ(Utthita Parsvakonasana)
引用:freepik
体側を伸ばすポーズとは
ポーズ名はUtthina(伸びた)Parsva(体側)kona(角)の意味。日常ではあまり使うことがない体側を一直線にストレッチできて、ウエストのくびれメイクにぴったりです。
体側を伸ばすポーズのやり方
- 両足を大きく開き、右足先は外側へ向けて立つ
- 両腕を鎖骨の延長線上になるように伸ばす
- 息を吐きながら骨盤を正面に向けたまま右膝を曲げる
- 息を吸いながら上半身を右に倒し左手を頭上へ伸ばす
- 右手を右足の小指側の床につける
- 目線は天井を向け、左手の指先から左足の外側までを一直線にする
- 息を吸いながら右足を伸ばし両手を鎖骨延長線上へ戻す
- 息を吐きながら腕を下ろして元へ戻る
曲げた側の膝は足首よりも前に出さないようにするのがポイント。身体が硬い人は右手を床につけず、膝の上に肘を乗せましょう。
- 避けた方が良い人:股関節・鼠蹊部・膝関節にトラブルがある人
おすすめポイント
足先から手先までの大きな筋肉を一度に強化できるので代謝アップ効果があります。骨盤歪みを正しながら股関節の柔軟性を改善。
ダイナミックな動きなので、高いリフレッシュ作用も期待できます。
3、頭をひざにつけるポーズ(Janu Sirsasana)
引用:freepik
頭をひざにつけるポーズとは
ポーズ名はJanu(膝)Sirsa(頭)の意味。足を掴んだ手が支えになり、身体が硬い人でも両足の前屈より身体を伸ばしやすいポーズです。
頭をひざにつけるポーズのやり方
- 体側に手をついて座り、両足を揃えて伸ばす
- 左膝を曲げて足裏を右の太ももにつけ、右足と90度になるよう広げる
- 息を吸いながら両手を天井へ向けて伸ばして姿勢を正す
- 息を吐きながら上体を前に倒す
- 両手で足首を掴んでかかとを前方遠くへ向かって押し出す
- 左膝を内回しにするイメージでホールドし呼吸する
- 息を吸いながら起き上がり元へ戻る
座骨が床から離れないように安定させるのがポイント。お腹を引き上げながら背中も伸ばしましょう。
おすすめポイント
曲げた足の方にある腎臓を刺激して機能を改善する効果があります。両足をアシンメトリーにすることで、効率よく腸腰筋を鍛えて下半身痩せにも効果的です。
4、立位の開脚前屈のポーズ(Prasarita Padottanasana)
立位の開脚前屈のポーズとは
ポーズ名はPrasarita(広げる) Pada(足)uttana(強く伸ばす)の意味。座位での前屈よりも重力がかかるポーズで、両手を背中側の床に降ろして組むのもおすすめです。
立位の開脚前屈のポーズのやり方
- 肩幅の2倍ほど広めに足を開いて、両足の方向を平行に保って立つ
- 息を吸いながら目線を斜め前へ、背筋を伸ばし腰に手を当てる
- 息を吐きながら上体と床を平行になるまで倒す
- 両手を床につけてさらに深く前屈する
- 頭頂を床につけてホールドし呼吸する
- 息を吸いながら半分起き上がる
- 息を吐きながら両手を腰に当てて元へ戻る
つま先は外側でなく平行に前を向けるのがポイント。背筋をしっかり伸ばして行いましょう。
- 避けた方が良い人:高血圧や血栓症・椎間板・眼のトラブルがある人
おすすめポイント
股関節を柔軟にするポーズで骨盤や膝の歪みを正す効果があります。太ももをやわらかくしてX脚・O脚などの足のトラブル解消にも効果的。
頭と心臓の位置が逆転するので血行促進効果も期待できます。
5、頭立ちのポーズ(Sirsasana)
引用:freepik
頭立ちのポーズとは
ポーズ名はSirsa(頭)とasana、ズバリ『頭のポーズ』です。ヨガを行う人ならぜひ一度はチャレンジしたい王道のポーズ。首を傷めないよう注意が必要な上級者向けポーズです。
頭立ちのポーズのやり方
- 床に四つん這いになり両腕を組む
- 組んだ腕を解いて頭頂を床につけ、後頭部で両手の指を組む
- 膝を少しずつ伸ばしてつま先立ちになる
- 足を頭方向へ向かって少しずつ動かす
- 体重を両腕に乗せて足を浮かせて、目線は正面へ
- 足をゆっくりと上げながら膝を持ち上げる
- 膝を伸ばしてつま先を天井に引かれるように伸ばす
- そのままホールドし呼吸する
- お腹に力を入れながらゆっくりと元の四つん這いへ戻る
頭から背骨が一直線になるように意識するのがポイント。両手の小指と肘で床をしっかり押して身体を支えましょう。
難易度の高いポーズですが、練習のコツは上半身をまっすぐ立てられるようになるという点。床に上半身を垂直に立てられるようになれば、自然と下半身がついてきて足があがるようになります。終わった後は、チャイルドポーズで少し休んでから起き上がりましょう。
- 避けた方が良い人:生理中の人や血圧や血流障害・循環器・首・肩・背中などにトラブルがある人
おすすめポイント
まさにアーサナの王様、『効果の宝庫』のようなポーズです。頭立ちのポーズができれば全身の健康管理が叶うと言えるほどの様々なメリットがあり、血行促進・内臓の活性化・体幹強化やダイエットに姿勢改善と、数える指も足りないほどです。
精神的にも身体的にもバランス感覚を研ぎ澄ますには特にオススメのポーズです。
アシュタンガヨガ|順番を覚える練習におすすめの動画2選
ポーズ解説を終えたところで、ここでは自宅でポーズの順番を覚えるのに最適な動画をピックアップ。毎日の練習として行える短編と、週末に身体の変化を感じながらじっくりと行える長編の2つを紹介します。
おすすめの動画|1、のだゆみ先生 アシュタンガヨガ 紹介動画
のだゆみ先生 アシュタンガヨガ 紹介動画の内容
アシュタンガヨガでは日本の第一人者ケン・ハラクマ氏に師事したのだゆみさんの動画です。10分の動画の中で『太陽礼拝A』『太陽礼拝B』の流れをしっかり練習できます。
続いて『体側を伸ばすポーズ(Utthita Parsvakonasana)』から『ねじった体側を伸ばすポーズ(Parivrtta Parsvakonasana)』へのスムーズな動きをレクチャーしてくれます。
おすすめポイント
ヨガ教室にいるかのようなわかりやすさと聴きやすい解説がおすすめで、次のポーズへの移行の仕方が身につきます。アシュタンガヨガを始めたい、または始めたばかりの人が毎日の練習として行うのに最適です。
まずは気持ちよくのびのびと、流れるように太陽礼拝を行えるようになりますよ。
「ゆっくりとわかりやすく説明しており」等2,3行でお願いします。
おすすめの動画|2、アシュタンガヨガ・プライマリーシリーズ【毎日行いたいハタヨガシリーズ No.6】
アシュタンガヨガ・プライマリーシリーズ【毎日行いたいハタヨガシリーズ No.6】の内容
東京を中心にNew York Style YOGAを指導している斉木美佳さんのアシュタンガヨガ動画です。週末の練習として行えば、自分の精神や身体の変化の違いに対する『気づき』が得られるでしょう。
太陽礼拝はサンスクリット語のカウントで本場感満載、でも解説は日本語だからとてもわかりやすいです。
おすすめポイント
『太陽礼拝A・B』に続いてプライマリーシリーズまでの流れを覚えることができます。教室に通っている人なら、プライマリーシリーズの練度を上げる目的で行うのもおすすめです。余計なBGMが一切ないので、深く集中することができます。
練習の前後には、美佳さんと一緒に『Om(オーム)』を唱えて心も整えましょう。
アシュタンガヨガに関する|Q&A
アシュタンガヨガで唱えるマントラはどういう意味が込められている?
マントラ(真言)はサンスクリット語で書かれた仏に対する賛歌。唱えることで心身を浄化すると言われています。
練習の始めのマントラは、精神を集中させてこれから行う練習を良いものにしようという心で唱えます。ヨガスートラを書いたパタンジャリに向け、「喜びを教え、迷いと毒を消してくれるようひれ伏して祈る」という意味があります。
終わりのマントラは、練習を無事に終えたことを感謝しながら日常生活へ戻るために唱えます。「子孫の繁栄を感謝し、聖なるものに徳を与えて世界に幸福を満たすよう祈る」という意味があります。
ヨガの練習だけでなく日常生活も『八支則』に基づいて正しく行う、その心構えといった意味が込められています。
アシュタンガヨガとハタヨガの違いって何?
アシュタンガヨガとハタヨガの大きな違いは『ルールの有無』『呼吸法』の2つです。
ハタヨガは全てのヨガ流派の基本といわれるもので、一人ひとりに合わせてポーズを変えたり、プロップス(補助具)を使って行うなど柔軟性があるのが特徴です。また呼吸法は腹式呼吸を行います。
一方アシュタンガヨガはポーズの流れに明確なルールが定められています。決められたポーズを繰り返し練習することが重要で、自由度はかなり低いです。呼吸は独特な呼吸音を立てるウジャイ呼吸、腹圧を高めて鼻から息を吸ったり吐いたりする胸式呼吸です。
まとめ
アグレッシブに動けるアシュタンガヨガの魅力を紹介しましたが、いかがでしたか?
「難しいしついていくだけでバテてしまいそう」と言いたくなるようなアシュタンガヨガですが、実は初心者さんにもおすすめです。気軽にできるとは言わないまでも、『守るべきルール』があるからこそ誰にでも同じように行えてメリット実感することができるのです。
精神修養にもなるアシュタンガヨガは女性のメンタル&ビューティーケアにも最適。心身ともにヘルシーになるために始めてみましょう。